中性脂肪とは
近年よく見かける「中性脂肪」という言葉。健康診断でも中性脂肪が高い場合は指摘されます。どのような意味や、役割があるのかを解説します。
中性脂肪について
中性脂肪とは、体内にエネルギーを貯蔵する脂肪のことです。善玉コレステロールと、悪玉コレステロールを生成するためにも利用されます。
人間の血液中には、4種類の脂肪が存在します。中性脂肪をはじめコレステロール、リン脂質、遊離脂肪酸です。
体内でももっとも多くの割合を占める脂質が中性脂肪です。グリセリン(グリセロール)が3つの脂肪酸と結合した化学構造をしています。中性脂肪はトリグリセライドやトリグリセリドとも呼ばれています。
中性脂肪には、2種類あります。外因性トリグリセリドと、内因性トリグリセリドです。前者は食事で摂った脂肪が腸の働きによって吸収されて、血液中に取り入れたれたもの。
後者は、肝臓に取り込まれた脂肪が血液中で再度、合成されていたものです。中性脂肪の大半は外因性トリグリセリドであり、食事によって分泌されています。
果物やアルコール、ジュース、穀物、砂糖など食事を通して、エネルギーとして使われなかった余分が、中性脂肪になります。
中性脂肪の働きは、ブドウ糖の不足を補うことです。生命活動を維持するために使われるエネルギーがブドウ糖なので、通常時、中性脂肪は体内で貯蔵されていることになります。
運動や絶食など、ブドウ糖の吸収がされない場合、中性脂肪が活躍してくれるということです。エネルギーとして体温を一定に保ち、外部から内臓を保護してくれます。
コレステロールとの違いとは
中性脂肪と同じく、健康診断でなじみのある言葉にコレステロールがあります。4種ある脂肪のひとつですが、どんな特徴があるのでしょうか。
コレステロールは、細胞膜の材料になる脂肪です。人間の身体は、60兆個の細胞からできています。細胞を作る細胞膜の材料が、コレステロールです。
細胞膜だけでなく、副腎皮質ホルモンや性ホルモン、胆汁の材料にもなっており生命活動・維持において、重要な役割を果たしています。
コレステロールがあるのは血液中だけはありません。脳や内臓、筋肉まで全身に分布しています。また、コレステロールは2つのタイプがあります。
HDLコレステロール(善玉コレステロール)とLDLコレステロール(悪玉コレステロール)です。HDLコレステロールは、全身の各組織に溜まった余分なコレステロールを肝臓まで運搬します。掃除のような役割があります。
一方で、肝臓からコレステロールを体中へと運び出すのが、LDLコレステロールです。血管壁に沈着して、酸化を促し、血管をつまりやすくさせます。
中性脂肪は余ったエネルギーであり、コレステロールは細胞膜・ホルモンの材料であり、まったくの別物であることがわかります。
中性脂肪が高いとどうなってしまう?
中性脂肪が高いと、さまざまなリスクが発生します。具体的に見ていきましょう。
中性脂肪が高くなると、脂質異常症の状態になりやすくなるだけでなく、動脈硬化、糖尿病、心筋梗塞、脳出血、脳梗塞、狭心症といった生活習慣病を引き起こすリスクがあります。
悪玉コレステロールが優勢になり、血管壁に沈着したり、損傷を与えたりするためです。血管内が圧迫されて、徐々に狭くなっていきます。また血栓という血液の塊も作られやすくなります。
中性脂肪が過剰に蓄積されても、初期症状には現れません。発病するまで自覚できないため、サイレントキラーとして恐れられています。健康診断を通して、はじめて危険性やリスクに気づく人も少なくありません。
【当てはまったら要注意!】中性脂肪が高くなりやすい人の特徴
中性脂肪が高くなることのリスクについて解説してきましたが、どのような特徴があると中性脂肪の値が高くなる傾向にあるのでしょうか。
ここからは、中性脂肪が高くなりやすい人の特徴や共通するポイントについて紹介します。
甘いものが好きで食べ過ぎている
甘いものを食べすぎていると、中性脂肪が高くなりやすい傾向にあります。カロリーの高いものや糖分を多く含む食べ物は中性脂肪を増やしやすいためです。
果物やパン・ご飯・麺類などの炭水化物を食べすぎるのも糖質の摂りすぎになる可能性があるため、食べる量には注意してください。
また、揚げ物など油分の多い食事も中性脂肪が高くなる原因となります。
脂肪の代謝を助ける食事を取り入れたり、野菜を積極的に摂取して中性脂肪が高くなる食べ物は避けたりして、摂取量をコントロールするように心がけましょう。
アルコールを摂取しすぎている
アルコールの摂取しすぎも、中性脂肪が高くなる原因のひとつです。毎日お酒を大量に飲んでいる人は注意しましょう。
人によってお酒を分解するスピードなどの許容量は異なりますが、毎日のように酩酊しているような摂取量は明らかに飲みすぎにあたるので減らしたほうが良いといえます。
アルコールの摂取量が中性脂肪に影響するのは、アルコールを肝臓で分解して代謝する際に中性脂肪が生成されるためです。
また、アルコールと一緒に高カロリー・高脂質なおつまみを食べてしまうことも多いので、中性脂肪が高くなる傾向にあります。
喫煙している
喫煙している人も、中性脂肪が高くなる傾向にあります。喫煙すると善玉コレステロールの値が低下し、糖質や脂質の代謝に悪影響を及ぼすためです。
また、タバコに含まれるニコチンが脂肪の合成を促進するカテコールアミンというホルモンの分泌を活性化させてしまうため、中性脂肪が高くなる原因になります。
喫煙する習慣がない人でも家族や職場の同僚など、よく同じ空間にいる人が喫煙者であれば、受動喫煙をしている可能性が高いので注意してください。
普段あまり運動をしない
運動不足の人は、エネルギーの消費量が低下して代謝が悪くなるため、脂肪を溜め込みやすくなります。
そのような場合には、筋トレを行って筋肉量が増えれば基礎代謝量がアップするため、脂肪を溜めにくい体をつくると良いでしょう。
ただし、筋トレに励んでいても減量のために食事量を極端に減らしていると、エネルギー源を確保しようとして筋肉を分解してしまうため、代謝量低下につながりかねません。
運動で筋肉量アップを図るには、同時に食事で必要な栄養素の摂取を積極的に行うなど、生活習慣と食生活の総合的な見直しが必要になります。
中性脂肪を改善させる食習慣
中性脂肪の値を改善させるためには、食習慣の見直しが欠かせません。ここからは、中性脂肪を下げるための食習慣におけるポイントや注意点について紹介します。
過度な糖質制限は避ける
糖質の摂りすぎは中性脂肪が高くなる原因になりますが、極端に糖質の摂取を制限するのは体に悪影響を及ぼす可能性があるので注意しましょう。
糖質は、生命維持にかかわるエネルギー源としても重要なものであり、適度に摂取することが大切です。
1日あたり70~130g程度は糖質制限中でも摂取するように心がけましょう。糖質は、白ご飯100g(お茶碗に小盛程度)で約38g含まれているので、摂取する際に目安にしてください。
また、芋類や果物などにも糖質は多く含まれているので、おかずも含めてトータルで摂取すると良いでしょう。
良質な油を摂取する
中性脂肪を減らそうとむやみに油を避けるよりも、良質な油を摂取する方へシフトするのもおすすめです。
とくに青魚の油に含まれているオメガ3系脂肪酸(EPA、DPA)は、中性脂肪を下げる効果があるとされており、積極的に摂取したい食材のひとつです。
中性脂肪の代謝を促して血液をサラサラにする効果があるため、高血圧など生活習慣病の予防にも効果が期待できます。
そのほか、オメガ3系脂肪酸を多く含む油としては、チアシードやアマニ油、えごま油などがあり、摂取する油をこれらのものに変えるのも効果的です。
また、オメガ3系脂肪酸を多く含む油は熱に弱く酸化しやすいため、可能であればサラダにかけたりして加熱せずに摂取できると良いでしょう。
食物繊維を多めにとる
食物繊維を多めに摂るように意識することも、中性脂肪の値を下げるうえで重要です。
食物繊維は、腸の中で余分な糖質や脂質を吸着して体外へ排出する効果があるとされており、中性脂肪だけでなくコレステロール値や血糖値を下げるのにも役立ちます。
食物繊維は、キャベツなどの葉物野菜や海藻、キノコ類、豆類などに豊富に含まれており、これらの食材は低カロリーなものも多いのでダイエットにもおすすめです。
また、水分を含むと膨らむ性質をもっているため満腹感が得られやすく、食事の最初に食べるようにすれば食べすぎを防ぐことにもつながります。
便秘解消にも効果的なので、食事内容を見直す際には食物繊維を積極的に摂れるようなメニューを取り入れるようにしましょう。
中性脂肪対策に効果的な運動方法
中性脂肪を下げるには、食事を見直して摂取する脂肪や糖質の量をコントロールすることに加え、運動を取り入れて代謝量をアップさせるのも効果的です。
では、どのような運動を行えば、中性脂肪対策に効果があるのでしょうか。
ここからは、中性脂肪を下げるために運動を行う際に意識しておきたいポイントや、おすすめのトレーニング方法について紹介します。
有酸素運動
有酸素運動を行うと、中性脂肪を下げる効果が期待できます。有酸素運動は脂肪燃焼に効果的だとされており、食事の見直しと合わせて取り入れるとより中性脂肪値の低下につながるでしょう。
有酸素運動として挙げられる種目には、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどがあります。
とくに、プールの中を歩き続ければ、水の抵抗でウォーキングの効果をさらに引き出してくれるうえに、浮力によって膝や腰への負担が軽減されるのでおすすめです。
また、日常生活の中で一駅歩く、エスカレーターやエレベーターではなく階段を使うように意識するのも良いでしょう。
ただし、有酸素運動は20分以上継続して行わなければ効果が出ないといわれているため、20分以上続けられるかを目安に取り入れやすい運動を継続して行うことが大切です。
筋トレ
有酸素運動のように直接脂肪燃焼につながる運動ではありませんが、筋トレを行って筋肉量が増えれば基礎代謝量がアップします。
筋トレで筋肉量を増やして基礎代謝量をアップさせながら、有酸素運動で脂肪燃焼を行えば、効率良く中性脂肪を落とすことができるでしょう。
筋トレを行うときに注意しなければならないのが、体に負荷をかけすぎないことです。
筋トレの効率をあげようとして強い負荷でトレーニングを行うと、継続するのがつらくなるうえに、膝や腰など体を痛める原因になりかねません。
トレーニングで効率良く筋肉をつけるのであれば、高負荷なメニューをこなすことよりも大きい筋肉を意識して鍛えると良いでしょう。
とくに太ももやお尻、お腹まわりの筋肉は体の中で比較的大きい筋肉がある部位なので、意識してみてください。
太ももやお尻、お腹周りを鍛えるのにおすすめのトレーニングは「プランク」「スクワット」「クランチ」などです。
それぞれの具体的なトレーニング方法について紹介します。
・プランク
1.床にうつ伏せになった状態で手首から肘にかけて床につき上体を起こす
2.腕立て伏せの要領でお腹を床から浮かせる
3.頭からつま先が一直線になるように意識して30秒程度キープする
4.ゆっくりとお腹を床につけて力を抜く
プランクではウエスト周りの体幹を鍛えることができます。お腹を浮かせるとき、床に近すぎて腰が反ってしまうと、腰痛の原因になることがあるので注意しましょう。
・スクワット
1.両足を肩幅程度に開いて立つ
2.ゆっくりと腰を落として膝が90度程度に曲がるまで腰を下げる
3.ゆっくりと元の位置に戻る
スクワットは正しい姿勢で行わなければ、膝に負担がかかるので注意が必要です。
ポイントは重心をかかと側にすることで、腰を落としたときに膝がつま先より前に出ないようにしましょう。このとき、背中が前傾になりすぎないようにキープすることが大切です。
また、両足を肩幅よりも大きく開いて行うワイドスクワットであれば、お尻の筋肉を鍛えるのにも役立ちます。
・クランチ
1.仰向けに寝転がる
2.足を上げて膝を90度に曲げる
3.頭から肩甲骨まで浮かせて30秒程度キープする
クランチでは、お腹の筋肉を重点的に鍛えることができます。頭を起こすとき、後頭部で手を組むと手で無理に頭を上げようとして、首を痛める場合があるので注意してください。
頭を持ち上げたときにおへそを見るように意識すると、うまく上体を起こすことができます。
ストレッチ
筋トレや有酸素運動に加え、ストレッチも中性脂肪対策に効果的です。ストレッチで筋肉をほぐすことで、血流が改善されて代謝アップにつながります。
また、筋トレや有酸素運動を行う前にストレッチをすれば、筋肉や関節の可動域が広がって怪我の予防にもつながるのでおすすめです。
そのほか、エステに通って代謝アップに効果的な施術を受けるのも手段のひとつとして活用できます。
食事内容の見直しやトレーニング方法などのアドバイスも受けられるので、モチベーション維持などにうまく活用してみると良いでしょう。
まとめ
健康診断で指摘される中性脂肪について、コレステロールと比較しながら、そのリスクや対策について解説しました。
日常の食生活と運動を通して中性脂肪を燃焼させ、健康診断で問題の生じない健康体を手に入れていきましょう。