運動で脂肪を燃焼するメカニズム
まずは、どのように脂肪が燃焼するのか、メカニズムを紹介します。
脂肪は分解することで燃焼する
体内に取り込まれた糖質や脂質は、肝臓で蓄えられ、順次エネルギーとして使われますが、使われなければ脂肪に変えられます。そのタイムリミットがおおよそ48時間です。脂肪は「白色脂肪細胞」に取り込まれます。
白色脂肪細胞は内臓の周りや皮膚の下に存在し、成長期が過ぎても脂肪の量に応じて際限なく増えます。いくらでも太れるのはそのためです。そして一度増えた白色脂肪細胞は、簡単に減らせません。白色脂肪細胞に蓄えられた脂肪は、基礎代謝や運動などで体内のエネルギーが不足すると、使われるようになります。
脂肪が分解されるのは、エネルギーの不足によって交感神経が優位になり、リパーゼという酵素が活発になるからです。リパーゼによって脂肪は、グリセロールと遊離脂肪酸に分解されます。このうち遊離脂肪酸を取り込むのが「褐色脂肪細胞」です。白色脂肪細胞に比べると、少量しか存在しません。
同じ脂肪細胞でも、褐色脂肪細胞の中にはミドコンドリアが存在し、遊離脂肪酸と酸素を結びつけてエネルギーに変換します。一般的に「脂肪の燃焼」と呼ばれるのは、この現象です。遊離脂肪酸に分解されても、使われなければ再び脂肪に戻り、白色脂肪細胞に取り込まれます。
脂肪を燃焼できる心拍数とは
運動は大きく分けて無酸素運動と有酸素運動の2種類があり、先ほどのメカニズムで脂肪を燃焼してくれるのが有酸素運動です。ウォーキングやジョギング、水泳などが該当します。大きな力を出すのは苦手ですが、長時間続けるのは得意です。
運動を始めてすぐの頃は糖質と脂肪の両方をエネルギー源としますが、20分以上続けると脂肪を多く消費するようになります。1日のトータルで20分以上でも構いません。
ただし有酸素運動でも、楽だったり軽かったりすると、多くの酸素を取り込まないため、燃焼される脂肪の量も少なくなります。脂肪の燃焼を重視するのであれば、ある程度の強度が必要です。
強度はMET’sをはじめ、様々な計算で割り出せますが、心拍数で測ると簡単です。220から年齢を引き、0.6~0.8を掛け合わせた数値が目標心拍数となります。40歳の男性なら108から144です。
少しきついけど、まだ話せる余裕があるくらいが目安となるでしょう。最近は腕時計型の活動量計も販売されているので、簡単に運動中の心拍数を測れます。
ダイエットに効果的!運動に適した時間帯とは?
効率良く痩せるためには、脂肪燃焼に適した時間帯に運動することが大切です。おすすめの時間帯と理由について紹介します。
朝
運動後は一時的に食欲が低下するといわれています。 そのため、朝食の際、少ない食事量でも満足しやすくなります。
また、朝の運動は交感神経を優位にする働きもあります。交感神経が活発になると、基礎代謝が上がった状態をキープできて、1日の消費カロリーも増えます。
朝の運動で副交感神経から交感神経へのスイッチがスムーズになり、1日を快適に過ごせるようになるでしょう。起床後すぐに運動するときは、体を起こすためにもウォーミングアップをしっかり行うことがポイントです。
午後4時~7時頃
朝以外のおすすめの時間帯は夕方、特に午後4時~7時ごろです。
夕方は、1日をとおして脂肪燃焼効果がもっとも高まる時間帯といわれています。朝よりも体を動かしやすい夕方のほうが、運動パフォーマンスも高いといえるでしょう。また、体が温かくなっているため、カロリー消費にも適しています。
運動を避けたほうがいい時間帯もあるの?
ダイエットに効果的な時間帯は朝と夕方ですが、運動に適さない時間帯もあります。ここでは、運動を避けたほうが良い時間帯を紹介します。
食事前で空腹のとき
食事前の空腹時に運動するのは逆効果です。なぜなら、空腹時に激しい運動をすると、血糖値が低下して貧血やめまい、不整脈などのリスクが高まるからです。
また、体に必要なエネルギーが不足していると、脂肪ではなく筋肉を分解してエネルギーを作り出そうとするため注意しましょう。
空腹状態では集中力も低下してしまいます。激しい空腹状態のときは、運動前にバナナやゼリー飲料などで軽くエネルギーを補給しておくと良いでしょう。
食事後で満腹のとき
満腹の状態で運動すると、体への負担が大きくなってしまいます。特に食事をした直後の運動は避けましょう。
胃の中に食べ物が残っていると、消化器官の働きが活発になるため、血液の循環は良好です。しかし、この状態で運動すると、胃に届くはずの血液が筋肉などに分散され、消化不良につながります。
消化不良のまま運動すると、気分が悪くなる、吐き気をもよおすなどの症状が出るおそれがあります。また、血液循環が活発なときの運動は、心臓への負担も増えるためおすすめできません。
寝る前
寝る前の激しい運動は、交感神経を高ぶらせてしまいます。交感神経が活発な状態だと、睡眠に影響を与えかねません。寝つきが悪い、途中で目が覚めてしまうなど、睡眠の質が低下するおそれがあります。
そのため、寝る前はストレッチなど軽い運動にとどめることが大切です。激しい運動は、就寝の3時間前までに行うようにしましょう。
脂肪燃焼におすすめの運動は?
では、脂肪燃焼を意識するなら、どのような有酸素運動が適しているのでしょうか。
自宅でできる有酸素運動
自宅でもできる有酸素運動の中で簡単なのが「踏み台昇降」です。踏み台が無くても、ちょっとした段差があれば、どこでもできます。昇り下りを繰り返すだけですが、10分も続けていると汗ばむくらいです。より強度をつけるなら足の動きに合わせて両手を振り、しっかりと太ももを上げます。1セット10~15分を3セット行いましょう。
次に「エア縄跳び」です。縄跳びをするつもりでピョンピョンと飛び跳ねます。一見、簡単そうに見えますが、その場で飛び跳ねるのは意外と体力が必要です。脂肪を燃焼させるだけの強度もあります。背筋はまっすぐに伸ばし、膝を曲げずにつま先で着地するのが基本です。1セット5分を3セット行いましょう。
「ダンスエクササイズ」もかなりの運動量があります。DVDを見ながら、音楽に合わせて振り付けのように体を動かしますが、1曲踊り終える頃には大量の汗が出ているでしょう。プログラムごとに、集中して動かす筋肉が決まっており、有酸素運動になるだけでなく、体を引き締める効果も期待できます。
屋外でできる有酸素運動
屋外でできる有酸素運動の中で、簡単に始められるのが「ウォーキング」です。それほど強度を必要としないため、これまで運動習慣が無かった人でも無理なくできます。
運動を意識するなら、まっすぐ前を見据え、腕を大きく振り、少し早足になるくらいのペースで進みましょう。体を平行に前へ進めるイメージです。一度に長時間歩くよりも、途中で休憩を取りながら行うほうが疲れづらく、目標を達成しやすくなります。
汗で水分が失われやすいので、ペットボトルの水を持参すると安心です。
ウォーキングでは物足りなかったり、脂肪の燃焼を実感できなかったりするときは、もう少し強度を上げて「ジョギング」をしましょう。ペースは時速8kmくらいと、ランニング(時速11km)よりもゆっくりです。まずは20分を目安に走ってみましょう。
ウォーキングよりもケガをしやすいため、行う前はウォーミングアップをします。また、シューズは必ずジョギング用を履いて、地面からの衝撃を和らげましょう。水分補給もこまめに行います。やり過ぎるとかえって筋肉を減らす原因になるので、1日おきに走るのがちょうど良さそうです。
近くにプールがあるなら、ぜひ「水泳」をしましょう。有酸素運動の中でも消費カロリーが多く、30分のクロールで約240kcalと、同じ時間ウォーキングをしたときの約3倍です。
泳げなくても、水中ウォーキングやアクアビクス、ビート板を使ったバタ足など、様々な運動を楽しめます。浮力があるので、膝や腰に不安がある人でも無理なく運動できるでしょう。
ダイエットの運動時間について知っておきたいポイント
最後に、ダイエットの運動時間について役立つポイントを紹介します。
短い時間の運動でも積み重ねると効果がある
「脂肪燃焼には、20分以上運動しなければならない」と聞いたことがある人は多いかもしれません。しかし1日の運動時間は、長時間まとめて運動しても短時間に分けて運動しても、減量効果に差はないといわれています。
忙しくてまとまった時間が取れない人は、隙間時間を活用して全体的な運動時間を増やしましょう。
休憩時間に軽くウォーキングをしたりスクワットをしたり、エスカレーターを使用せず階段を使ったりなどで、運動時間は簡単に増やせます。
毎日できなくてもOK!週3~4回の運動でも意味がある
ダイエットは、毎日運動しなければ意味がないわけではありません。週3~4回程度でも、継続して運動すれば効果があります。
毎日運動するのは難しいという人は、通勤や買い物時間を活用しましょう。日常動作の中で階段を使うなど、体を動かすように意識するだけでもOKです。
もちろん、毎日運動するほうが効果を実感しやすいといえます。毎日続ければ運動習慣も定着するので、時間に余裕のある人は積極的に体を動かしましょう。
まとめ
ダイエットのために運動するときは、朝と夕方の時間帯に行うのがおすすめです。 脂肪は体内のエネルギーが不足すると分解されて燃焼します。多くの酸素を取り込める心拍数や、代謝が上がる時間帯を意識しながら有酸素運動を行うと、効率良く脂肪を燃焼できるでしょう。